会ったこともない相手に名前を呼ばれ、不覚ながらも呆然とする俺に、中川は冷たく笑いかけた。
「偶然にも、2回ほど君の名前を耳にしましてね」
「………」
俺は、自然と警戒心を強めた。
こいつは、ただ者じゃない…直感的にそう感じた。
「1回目は…君が部下を追い払った後、違う道から後をつけていた部下が、志乃お嬢様が君の名前を呼んだのを聞いていてね」
あの時、やっぱ他にも敵がいたんだ。
もう一度あいつ、怒っておかねば。
なんて考えてるうちに、中川は続けた。
「そして2回目は…志乃お嬢様から、直接ね」
「………何だと?」
中川は、勝ち誇ったように微笑んだ。
「直接って言っても、電話越しですがね」
電話…?
何を言ってるんだ、こいつは。
「おや?時間屋さんは、頭がいいと聞いていたんですがね」
くっくっ、と小さく笑う中川を、俺は凝視する。
………時間屋。
俺がいつ、時間屋だと言った?


