目の前のインターホンを睨んで何分経ったのか。
15分?20分?
いや、実際はもっと短かったかもしれない。
けど、それぐらい長く感じている。


俺は今、伊坂のマンションに来ている。

ドアの前で逡巡してインターホンを押すか押すまいか、悩みに悩み貫いていた。
しかしこれ以上は変質者に間違われかねないと、意を決して指に力を込めた瞬間、少し離れた場所から「悠斗?」と呼ぶ声が聞こえた。


ビクリと肩が震えた。
ゆっくりとゆっくりと、スローモーションのように声のした方へと首を捻る。
そこには当然、伊坂が立っていて、驚いた顔で俺を見つめていた。