「俺このクラス。姫ちゃんの後ろの席
  俺の席だよ」



 机に頬杖をついて鼻歌まじりにそう言
 うと彼の携帯がけたたましく鳴り出し
 た。



 「……ごめんね」



 別に謝らなくてもいいのに、あたしに
 謝る必要なんてないのに、彼は手を合
 わせてあたしに謝ると、申し訳なさそ
 うに背を向けて電話に出た。



 「もしもし」



 少し低めの声で話し出した彼。



 聞いちゃいけないと思って、あたしは
 自分の席についてスケジュール帳を開
 く。



 だけど嫌でも聞こえてくる会話。



 「今日は無理だって」

 これは彼の声だ。

 「何で??約束したじゃん。今日ホテル
  連れてってくれるってぇ」

 相手は女の子みたい。



 「分かった。じゃ、今から迎え行く」



 彼はそう言って一方的に電話を切って
 しまった。



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