君に片思い

さわの後ろ姿を見て溜め息をつく。




───1課の飲み会か




行けば時田がいるだろうし、隣にでも座れれば久々に話すことも出来るだろうな。

最近、お互い忙しくて軽く挨拶を交わす程度しかしてないし………。



「松原さん?」


「えっ?あ…あぁ。」


つい飲み会の事を考えて自分が今仕事中だって事を忘れていた。


気がつけば交代の時間が来ていて、俺と交代しにきた相澤が立っていた。

「ぼーっとするなんて、らしくないですね。」


ふふふっと笑ってカウンター前に立つ相澤ゆかり。
彼女がそこに立つだけで、薄暗いカウンターは、一気に華やいだ。



確か時田と同期だよな……。


相澤と時田。
雲泥の差だな。


いつもドジばっかりの時田に比べ相澤は、常に落ち着いて行動しミスも少ない。新人の中では一番しっかりした使える奴だ。
それに、社内の中では一番可愛いんじゃないか?

ナベオが、しょっちゅう『可愛い』って言うくらいだしな。



「本当に可愛いよね、相澤ちゃん」


……──っ!!



「松、驚きすぎ。っつか、ぼーっとしすぎ。」


いつの間に来たのか、真後ろにナベオ。
台風2人目か。


「うるせぇよ。ってか何?」


「冷たいなぁ。松も休憩だから一緒にメシ行こうと思って迎えに来たのに」


さっきの、さわみたく頬をぷくっと膨らませて拗ねて見せるナベオ。
正直、可愛くない。

まったく、どいつもこいつも……




「行くぞ。ナベオ」