君に片思い

「まーつー!!」


暇な団体カウンターでボンヤリ客を眺めてると威勢のいい声が耳に飛び込んできた。

声の主は目を輝かせながらこっちに向かって走ってくる。



「さわ……恥ずかしいから叫びながらこっち来んの止めろよ。」


目の前にたどり着いたソイツに呆れた顔して言うと「えへへ。ごめん、ごめん。」と悪びれもせず謝ってくる。
こいつもナベオみたいな奴だよな……。
まぁ、だから一緒つるんでるんだけど。


「で?何。お前がそんな風に来るときは絶対ロクでもない頼み事がある時な気がする。」



「失礼な!」

ぷくっと頬を膨らませて“さわ”こと小笠原美香は俺の肩をバシバシ叩く。

「さわ。痛い。」


「あっ、またまたごめん。
じゃなくて!!今日1課で飲み会あるんだけど、松も来ない?今日早番でしょ。ナベも高橋も来るしさぁ。」


1課……って


「なぁ、あと誰来んの?」


平然を装い、何気なく聞く。
けど内心はアイツの名前が出るんじゃないかって期待してる自分がいた。


「あと?んーとね、新人一人立ちおめでとう会だから新人は強制参加でしょ。それから斎藤部長と柴垣マネージャーかな。」


新人は強制参加……

ってことはアイツも来るんだ。



「1人会費4000円で19時に魚将だから!!」



まだ行くとも言ってないのに気がつけば俺も強制参加。
時間と場所を言うと、さわは走って何処かに行ってしまった。



「相変わらず台風みたいな奴だな。」