ピッ…


カフェオレがレジを通ると、彼の奥にある煙草の棚に視線を送る。


そんなあたしの視線に気付き、彼は言わずともあたしの煙草を手に取る。


ピッ…


「442円になります」


いつも通りの流れ。


でも、このまま帰ってしまうのが淋しいと思ってしまうあたしは、何を期待しているんだろう。


すんごい奇跡?


彼もあたしの事を気になってくれていて。


「良かったら連絡先を教えてもらえませんか?」


…なんて。


ある訳ないか。


普段よりも時間を稼ぐ為に、442円をゆっくり小銭で出した自分に笑えてくる。


「ありがとうございましたー」


カフェオレと煙草の入ったビニール袋を手に取り、ふと彼の顔に目をやった。


偶然にも彼と目が合って、そしてお互いに、ぎこちなく笑い合う。


でも、やっぱり。


奇跡なんて起きるはずもなく、あたしは彼に背を向けると、入口に向かって歩き出した。