俺達は何も話さないまま誠也の家に向かった。


誠也の部屋に入ると果懍は
俺の手を取って自分の両手
で包み込む。


「ごめん。私のせいで…痛くない?」


「痛くねぇよ…。それにお前のせいじゃねぇから…気にすんな。」


「陸君…助けてくれて有難う。
凄く嬉しかった…。」


「別に…。当たり前の事だろ。」


「……当たり前の事なんかじゃないよ…。」


そう言った果懍は黙り込む。


岳の取った行動は果懍にとって裏切り…。


岳に裏切られた果懍に本気で人を好きになった事がなかった俺にはどんな言葉を掛けてあげればいいのかわからない…。


俺はそっと果懍を抱き寄せる。


「私に…前園君を責める資格なんてなんて無いの…。前園君は私の気持ちに気付いていたんだ…。そんな女の為に身体張って守る事なんて出来なかったんだと思う…。」


「お前の気持ち…?」


「私…最低だ…。前園君と付き合ってるのに陸君の事.好きになってた。
何度も前園君に言わなくちゃって
思ったの。でも…言おうとすると
話しを逸らされて…。」


思ってもいなかった果懍の
話しに俺の中で疑問が出て
くる。