俺が安易に口にした「死」と言う
言葉によって張り詰めていた糸
が切れた様な母さんの表情に俺
は恐怖を感じた。


「岳の苦しみをお母さんが
代われるものなら代わって
あげたいけど出来ないもの…。
もうお母さん岳が苦しむ顔を
見たくないから…。」


「母さん…。」


母さんはもう限界に
きているんだ…。


俺は何をしてるんだろ…。


何の努力もせず自分が
世界で1番不幸になった
ような顔して…。


死にたいなんて本当は
思っていないんだ…。


考える事はあっても
それを実行出来る根性
なんて俺には無い…。


その事を考える事で自分で
自分の不幸な運命の物語り
を作りあげていただけなの
かもしれない。


「ごめん…。一人にさせて
くれないかな…。」


「岳.お母さんは本気よ!!」


「わかってる…大丈夫だから…
もう…死にたいなんて言わない。」


母さんが部屋から出て行く。


ドアの向こうから母さんの
鳴咽が聞こえて来る。


いつもと違う心境で
俺は聞いていた。


母さんは何も悪くないのに…。


母さん…ごめん。


俺は母さんの優しさに
甘えてたんだ。


本当にごめん…。