「お疲れさん。」


運ばれて来たウーロン茶
とビールのグラスを合わす。


誠也が酒を飲むのは珍しい。


俺も誠也もお互い飲めなく
はないが好んで酒を飲む事
はなかった。


誠也のグラスを
空けるピッチが早い。


「誠也…飲みたきゃ飲めば
いいけど…無理して飲んで
るんだったら止めろよ。」


誠也はグラスを置くと
大きく深呼吸して俺を見た。


「陸…俺…どうしていいのか
わかんねぇよ…。
俺の考え方が間違ってるのかな?」


誠也の目から涙が流れ落ちた。


「何があったんだよ
ゆっくりでいいから話してみろ。」


「…子供が出来たんだ…。」


「…子供って…佐伯にか?
お前の…子供なんだろ…?」


「あぁ…。」


「じゃあ何で迷ってんだよ?…まさか…産ませる気ねぇのか?」


「………。」


俺達も今年で24になる。
仕事にもちゃんと就いて
生活だって贅沢は出来ない
だろうけど…嫁さんと子供
を養っていける位の収入だ
ってある。


ガキの時じゃあるまいし…
責任が持てずに悩む歳でも
ないはずなのに。


それに誠也は佐伯に
本気で惚れているはず…。


俺は誠也の思い詰めた表情が
理解出来ずに居た。