「陸君…。」


「…行けって…。」


俺は果凜の顔を見ずに言った。


また果凜が泣いているのがわかったから…。


俺は最後の最後まで果凜を
泣かせる事しか出来なかった。


「………。」


果凜の甘い匂いが外の空気に
吸い込まれて行く。


ドアの閉まる音が果凜の
苦しみの終わりを告げた。


俺はすぐに車を出す。


涙で前が見えない…。


堪えていた涙が
とめどなく溢れ出し
それを止める事もせず
俺は大声で泣いた…。


失った者の大きさを
改めて思い知る。


それ所か自らの手で自分の一番
大切な果凜をアイツの元に送って
しまった。


人生で一番の後悔…。


俺は一生忘れる事は無いだろう。


その忘れられない後悔の先には
果凜の存在…。


結局…俺の中で果凜の存在が
消える事は無いのか?


どれ位走ったんだろう?


気付くと随分遠くまで来ていた。


この長い道程の中で出た結論は
ただ一つ。


もう…俺は人を好きになる事は
無いだろう…。


相手を傷付け泣かせるだけの
俺に人を好きになる資格なんて
無いんだ…。