あれから俺は何度も岳を思い出す。


今までは岳の事なんて
思い出す事は無かったのに…。


「陸どうした?最近.ずっと
元気無いけど何かあったのか?」


俺の頭の中から一生懸命
信号を渡っている岳の姿が
離れないでいた…。


「誠也…俺.岳に会った…。」


「えっ…。話したのか!?」


「いや。…俺が見ただけでアイツは
気付いてねぇけど…。
俺がアイツをあんな身体にして
こんな事言うのって変だけど…
スゲェ…シヨックだった。」


「とうとう見ちまったか…。
俺…お前が入ってる時に叔母さん
から口止めされてたんだよ…岳の
身体の事…。
あの頃はアイツ…相当荒れてた
みたいで…お前ん家の叔父さんと
叔母さんも苦労したと思うよ。
でも…先週…俺も駅前でアイツ
見掛けたけど前に比べたら今は
だいぶ身体も動くようになった
んじゃ無いかな…。
顔付きも何か明るくなって
たみたいだし…。」


知らなかったのは俺だけ
だったのか。


いや…俺は知ろうともしな
かった…。


親父やお袋の苦労も知らずに俺は
少年院を出た後も自分の事しか
考えていなかったんだ。