「いい加減にしろっ。ガキがっ」

「あーあー。リューシュが我が儘ばっかり言うからセルシュがキレたぞ」


「……わかった! 舞踏会だろ? そのうち出る! これでいいだろっ」


半ば投げやりに荒っぽく言い残し、リューシュはそのまま勢い良くナッシュの部屋を出て行ってしまった。


派手な音を立てて扉が閉まった後で、深い溜め息が二つ木霊した。


「舞踏会に出るだけが目的じゃなくて、そっから婚約者の一人でも見つけてくれりゃあいんだけどな」


セルシュはこの何度となく繰り返されてきたリューシュとのやりとりに完全に呆れ切っている。



「ははは。まあ自分から出るって言っただけリューシュにしては進歩だろ。気長に待ってやろう」


セルシュより甘いナッシュはこう言って人の良い笑みを浮かべながら、セルシュの肩を叩くのだった。