「けど、そんなことをしても、雪ちゃんを傷つけるだけ。

雪ちゃんの人生に、障害が出るだけ」

伝染したと言うように、中沢さんの目にも涙がこぼれていた。

「きっと、上手く行かなくなる。

だからいつかは、雪ちゃんに、お別れを言おうと思ってた」

中沢さんは涙を隠すように、うつむいた。

「雪ちゃんには、本当に大好きな人と幸せになって欲しい」

涙で声を震わせながら、中沢さんが言った。

「雪ちゃんも、いつかはきっといい人が現れる。

俺が本当に雪ちゃんを愛していたように、その人も雪ちゃんを愛すだろうと思う」

「中沢さん…」

中沢さんは手で涙を拭うと、顔をあげた。

ポンッと、あたしの頭に手を置くと、
「雪ちゃんと離れても、俺は雪ちゃんの幸せを願い続けるよ」
と、言った。

「雪ちゃんと過ごした時間は、一生忘れない」

「…あたしも、です」

あたしは涙を拭った。

「あたしも、中沢さんと過ごした時間を…忘れません…」

中沢さんは、微笑んだ。