「何がおかしいんですか」

あたしは言った。

「いや、何にも…」

何にもないんだったら、笑うことないじゃない。

そう思いながら、芯に目をやる。

相変わらず芯はシカト。

「と言うか、酔ってるの?」

中沢さんが聞いた。

「わかるんですか?」

自分でもわかるほどの不機嫌な声で、彼に言った。

「わかるよ、見れば」

何なのよ……。

あたしは何も言えない。

と言うよりも、何を言ってもダメだろう。

簡単に、受け流しちゃうから。

「何かあったの?」

中沢さんがそんなことを聞いてきた。

あたしは、彼を見る。

黒い瞳が、せつなかった。

悲しそうに伏せる長いまつ毛が、さらにせつなさを演出していた。

「そんなに酔うほど、何かあったの?」

せつなさそうに聞く彼に我慢できなくなったのか、酔っぱらいになっていたせいか、あたしは話していた。

つきあっていた彼氏に失恋したことを。

あたし、何しゃべっちゃってるんだろ。