ただあなたに、気持ちを伝えたいだけ。

「待ってください!」

見つけた中沢さんの背中に、あたしは叫んだ。

中沢さんが振り返る。

あたしは、中沢さんの前に歩み寄った。

突然走ったから、息が苦しい。

乱れた息を整えると、あたしは中沢さんを見た。

「…好きです」

あたしは言った。

「中沢さんのことが、好きです」

言ったとたん、涙がこぼれた。

「結婚…していても…あたし…あたし…」

中沢さんがあたしを抱きしめた。

「もう、いいよ」

あたしの耳元で、中沢さんが言った。

「俺も…雪ちゃんのことが好きだった」

あたしを抱きしめる中沢さんの手が、強くなった。

「もう妻以外の人間は、愛すことなんてできないと思ってた。けど…」

けど、何?

「雪ちゃんを、好きになった」

あたしの目から、また涙がこぼれ出す。

罪悪感の気持ちでいっぱいのはずなのに、嬉しい気持ちの方が勝っていた。

信じてもいいの?