手慣れた手つきのはずなのに、芯の手は何だか震えていた。

何を言おうとしてたのだろう?

目をつぶってシェーカーを上下に振る芯を見ながら、そう思った。

「何かあったの?」

中沢さんが聞いた。

「いえ…。

何も…」

あたしはごまかすように笑って答えた。

自分でもわかるほど、答えた笑顔は固かった。

そのためか、顔の筋肉が少し痛かった。

芯ができたばかりのカクテルを、中沢さんに差し出した。

中沢さんの好きな、甘いピンクのカクテル。

中沢さんはコクッと、それを飲む。

芯はそんな彼をにらむように、見つめていた。

あたしと目が合うと、グラス磨きを始めた。

怒っているのか、グラスを磨く手が少しイラついていた。

何でそんなに怒ってるのよ。

あたし、芯に何か悪いことした?

「芯くん、今日は何か怒ってるね」

グラス磨きをする芯を見ながら、中沢さんが小さな声で呟いた。

「あ…そう、ですね…」

初めて気づいたと言うように、あたしも呟いた。