「雪ちゃん、ウソつかれるのが嫌いなんですから」

何で芯が入ってくるのよ。

中沢さんの前じゃなかったら、多分お酒をぶっかけているところだろう。

「じゃあ、正直に言うよ」

中沢さんがそう言うと、芯はまた元のグラス磨きに戻った。

何かグラスばっかり磨いてないか?

「本当に、モテたんですか?」

あたしは聞いた。

「すっごくね。

妻とつきあっても、まだモテモテだったよ」

妻――その言葉が出たとたん、ズキッと胸が痛んだ。

「奥さん、ヤキモチ焼いたんじゃないですか?」

胸の痛みを隠すように、あたしは言った。

「焼いたよ、すごく」

そう言った中沢さんは思い出したのか、笑った。

本当は、あたしが1番焼いていた。

中沢さんに近づいた女の人たちにも、奥さんにも。

あたし、いつからこんなにも嫉妬深くなっちゃったんだろ。

けどあたしがどんなに嫉妬しても、この恋心は、かなうことなんてないんだ。

わかってるけど、嫉妬しちゃうんだ。