「‥‥て事はさ、先輩は僕がどうしてあの時そこに行ったか気づいていたってわけだ」
「おお、まぁな」
「‥‥同棲してるんだ」
「ま、まぁな」
そう言われた葵さんは、もっと早く言ってくれても良かったのに。と眼鏡をくいっと上げた。
そして、今度愛の巣にお邪魔するね。と満面の笑み。
葵さんが来ると、いろいろと大変そう。
全てを聞いた菫はというと、私たちの過去の話よりも‥‥
「アオちゃん、凄い。かぁっこいぃ~‥ッ!!」
と、隣に座る葵さんに抱きついて大興奮の模様。
抱きつかれた葵さんは、そうでしょう?と得意げに言いながら同じ様に菫に抱きついた。
「お~お~、御熱い事で」
紅はそれを遠めに見ながら呆れていた。
「人の前でよく堂々とああいう事が出来るな‥」
「うん‥。まぁ、いいじゃない」
でも、私はそれがちょっとだけうらやましいなって思ったり。
まだキャーキャーという2人に紅は本気で呆れたらしく、席を立って廊下に出て行った。
「『よくどうどうと出きるな』って言うけどさ、先輩たちの前だから。ねぇ?」
「ねぇ」
「え?」
「だってこんな事、他の人の前でなんて出来ないよ」
「恥ずかしぃし」
「‥‥」
恥ずかしいって、見ているコッチの方が凄く恥ずかしいよ‥。
「あの、私もちょっと出てくるね」
そういって私はさっさと生徒会室を出た。
廊下の冷たい空気が、一瞬にして体中に染みて、身震いを小さくした。
はぁ‥、と息を吐けば真っ白な息が出ては消える。
窓から外を見れば白い物が。
空からふわり、ふわりと落ちてきていた。
「‥‥雪」
雪を見ると急に切ない気持ちになった。
紅の顔を見たくなって、傍にいたくなって辺りを見渡す
見えるのは長い長い廊下や、教室の入り口だけ。
‥‥紅、何処に行ったの?
私は何故かその場から動き出せず、しゃがみ込んで腕に顔を埋めた。
急に一人にされたという不安が私の中に渦巻いて、溢れてくる。
ほんのちょっと、離れただけなのに‥‥。
「‥‥おい、桃?」