えええええぇぇぇぇぇ‥‥ッ!?

「う、嘘‥」
「うぅ、嘘でこんな恥ずかしい事言えっか!!」
「だって‥‥」
「だっても勝手も無ぇ!俺はお前が好きなんだからな!!‥勝手な勘違いすんな」

今度は体ごと後ろを向いて、頭を下げる紅は耳まで真っ赤。

「‥ありがとう」

紅の正面に座りなおして顔を見ると、紅はギョッとした。

「‥どうしたの?」
「そ、それはこっちの台詞だ。何泣いてんだよ」

ポタリと手の甲に雫が落ちて、初めて気付く。
泣いているという事に。

「あ、あれ?ゴメン‥、嬉しくて‥」

紅に好きだと言われた事だけじゃない。
今ここに、目の前に紅がいてくれている事が嬉しくて。
だから気づかないうちに涙が出てきてたのかも。

「なぁ、桃。お前は俺でいいのか?」
「うん、もちろん」
「バカで何のいいトコも無ぇし、ただ喧嘩が出来るだけだし」
「紅は優しいよ。それにいつだって私を気遣ってくれて‥‥」
「それ以上言うな、ハジィ」

私はまだまだ知ってるもん。
紅のいいところを沢山。

「命を賭けてまで守ろうとしてくれたんだよね?」
「‥だから言うな」

だったら、ちゃんとそれなりにお返ししなくちゃ。

「ねぇ、紅。私からも約束作っていい?」
「何だ?」
「私を紅の“餌”にしてくれるって。‥だから私だってちゃんと約束する」



紅のお母さんの様には絶対にならないって。



紅は目を見開いた。

「俺はお前をおふくろの様にする気はねぇ」
「うん、私もなるつもりは無い」
「なら‥、いいぜ。なってくれよ“餌”に」
「はい」

紅は、これからは嫌でもずっと傍にいてやる。と私を抱きしめた。

「‥紅、泣いてる?」
「‥‥」

肩に冷たい雫を感じた私は、紅の背中を撫でた。

「紅」
「桃、‥お前の前だけだ。こんな情けねぇ姿も見せられるのは‥」
「‥いいよ、泣いて。私は笑ったりなんてしないから」

お互い、回し合った腕に一層強く力を込めた。

「絶対に、俺がお前を幸せにする」
「うん、ありがとう」

でもね、紅。
私はもう、幸せだって感じているから。



そして、私たちはこのまま夜を明かした。