この人の為に、
この人の為だけに生きようって。
だから‥

「私を紅さんの“餌”にして」

止まりかけていた涙が、また頬を滑り落ちようとしていた。
何故だろう、こんなに切ない。

「出来ねぇよ、俺には」

やっぱり、そうくると思ってた。

「出会った時に、言っただろ?『人の涙は嫌いだ』と。だから、出来ねぇ、よ」
「じゃあ、このまま死ぬの?」

ああ、貴方がそんな勝手な事を言うから、声が本格的に震えだした。

「‥‥最初、から‥その、つもりだった、んだ」
「紅さんが、このまま死んだ方が‥‥泣くよ?ずっと」
「なわけ、ねぇだろ‥‥」
「それに、紅さんが死んだら、後追って逝く」
「馬鹿な‥事‥言ってんじゃ、ねぇ‥」

本当だよ。
もし死んだら、絶対に後追って逝くんだから。
考えたくもないけど、もし死んだら自分のせいで死んだようなものだもの。



ドサッと何かが倒れる音。

「よくも邪魔しやがって‥‥」

ドッと踏みつけられる葵さん。
それを見て、紅さんは立ち上がろうとする。

「やっと、お前らだ」



『“餌”の血を飲めば傷は治りはしないが、体力の回復はする』



「こ、紅さんが死ぬなんて、血を与えて泣く時よりずっと痛いものだし、辛すぎるっ!!」

一歩、また一歩と迫ってくる。



「っ、お願い‥、飲んでッ‥!紅ッ‥!!」



そう叫んだ私の声は、少し掠れていた。
きっと、さっき首を絞められたから。
沢山、沢山泣いたから。

ねぇ、勝手な貴方は‥‥



このまま全て終わらせる?
それとも、未来を望んでみない?



って、ああ‥‥





もう、貴方の答えは決まったみたい。