「え?どういう事?」
「俺たちはお前らみたいに平和な恋愛じゃねぇからな」
「‥‥あぁ、なるほどね」

葵さんはほんの一部始終を知っているから、言いたい事が少し分かったみたい。
菫は首を傾げて、紅茶の入ったティーカップを眺めた。

過去の話を誰かにするのは初めて。

今まで、ずっと隠してきたから。
紅も同じように隠してきた。

自分たちの全てが上手くいって、紅も私も自然と笑い合える様になって。
次第に忘れていったっていうのもあると思うけど、



その日々が知らないうちに、過去を隠していったのだろう。



まるで辺りが見えない程、深くなった霧の様に。

でも、思い出そうと思えば思い出せる。



全て。



深い霧が掛かっている筈なのに、
深い霧という障害物がある筈なのに、
綺麗に思い出せる。

結局、それは何の意味もないモノなのかな。

「じゃあ、話そうか‥‥」



今から1年半ほど前の梅雨の時期からの、





過去の日々を‥‥