意味深な言葉を残して、葵さんは何処かへ行った。
その後姿を、私は消えるまで見ていた。
そういえば‥紅さんが最後に私に言った事‥‥
『‥‥さよならだ』
それって、本当に?
本当に“さよなら”なの?
学校が終わって、紅さんの家‥というより屋敷へ向かった。
『何かあったのかも』
そう、葵さんは言っていた。
それが頭からずっと離れなくて、離れなくて‥‥。
ここは、門番がいる。
この門を潜って、少し階段を上がらなければ屋敷へたどり着けない。
でも、いるはずの門番はいなかった。
「‥‥お、お邪魔します」
誰かに言うつもりだった言葉を、誰にも掛ける事無く、足を屋敷内に踏み入れた。
こ、これは不法侵入になるのかなぁ。
なんて思いながら階段を登っていく。
「お前は‥桃、かの?」
階段を登り終わると、着物を着た一人のお爺さんがいた。
このお爺さん、私の名前を呼んだ?
私を知ってる?
「今、葵が向かったが‥‥大丈夫かのぅ」
‥‥葵。
昼休みに会った先輩?
「お前は、紅が命と引き換えに守ろうとしただけあるみたいやのぅ」
‥‥いの、ち?
「桃とやら、お前はこの先に進むかどうかは、ちゃんと考えて決めるんじゃ」
「‥な、何をですか?」
「紅の事を受け入れる事が出来るのであれば、自分の人生を捧げる程の覚悟があるのであれば、先に進みなさい」
‥‥人生‥。
「もし覚悟も何も無いのであれば、戻りなさい。そして、辛いかもしれんが紅の事は忘れてやってくれ」
「どうしてですか?」
「それは言えん」
どこか悲しそうに笑って言うおじいさん。
でも、目は『紅を受け入れてやってくれ』と語っている様に見えた。

