もう一度、ポツリと呟かれる『ゴメンな』。
近づいてくる紅さんの顔、真紅の瞳。
紅さんの真紅の瞳に吸い込まれる様な感覚に襲われた私は、何かに囚われた様に身動きが出来なかった。
そして唇が重なって、ゆっくりと離れる。
パンッ!!
乾いた音が、静かな部屋に響いた。
私が紅さんの頬を、思いっ切り叩いた音。
「っ、‥あ、の‥‥」
「悪ぃ、でも‥‥」
これで‥‥桃、お前は自由だ。
そう言った彼に、疑問が浮かんでくるのは当たり前。
え、何‥‥?
どういう事なの?
そう思うのと同時に、激しい痛みが私の身体中を走り抜ける。
「っ、‥ぅ」
何が何だか分からず、身体が言う事をきかなくなっていく中で私は紅さんに視線を送った。
紅さんも膝と片腕をつき、胸の辺りを抑えて何かに必死に耐えていた。
「わりぃな‥、こ、するしか‥なかった、んだ」
「‥っ?」
何かを私に伝えようとする彼の言葉は、最後まで私には届かなかった。
届く前に、私が気を手放したから‥‥。
でも、最後に見た紅さんの顔は覚えている。
そして最後に微かに聞こえた言葉は‥‥
「‥‥さよならだ、桃」

