桃がベッドで寝息を立てだした頃、俺はそっと部屋を抜け出した。
そして静かに寝静まった空気を肌に感じながら、目指すは屋敷の一番奥の部屋。
ギィッと扉を鳴らせば、紺色の着物を着た人が視界に入ってきた。
また一回り小さくなったんじゃねぇのか?
いや、俺がデカくなったのか?
なんて考えながらその人の所へ。
「おぉ、こんばんは。紅」
ゆっくりと振り返って、ニッコリと微笑んだ爺ちゃん。
神様でもみてんじゃねぇのかと思う、その優しい笑顔。
この声を聞く度に、酷く安心するのは心から信頼しているからだろう。
‥‥親父とは全っ然ちげぇ。
本当に親子なんだろーなぁ?
と思う程だ。
「どうした、紅。何かあったんか?ん?」
昔から何かあると爺ちゃんに相談していた。
今日ここに来たのもその為だ。
「なぁ、爺ちゃん。ここで働いている“特別”なヤツは一人だけか?」
「ああ、“特別”なぁ。うん、一人だけじゃな」
「親父がそいつを辞めさせようとしねぇんだ」
「‥やろうの」
「辞めさせる方法とか、自由にしてやれる方法はねぇかッ!?」
つい力ごもってしまった。
でも爺ちゃんは、何も気にする事無く言う。
「‥‥ある」
「本当かッ!?」
「だが‥お前には出来んかもしれんのぉ。人間の血を好んで飲まんのじゃから」

