「‥‥それは出来んな」
「何でだよっ!!」
「何も出来んでも桃は“餌”だ。“特別”な存在なんだ。だからここに留めて置く必要がある」
‥‥例え、嫌がっていたとしてもな。
旦那さんは全てを見透かしたような目で、私を見ながらそう言った。
その言葉によって、心の中の希望は全て綺麗に溶けて無くなる感覚になる。
まるで、雪の様に‥‥。
季節外れにも程がある。
「桃、お前は先に戻っていなさい。紅と少し話がしたい」
「ぁ、はい‥」
ただ、普通に返事をするだけなのに、息が詰まっているのだろうか‥‥
その声は震えていた。
あぁ、私は紅さんに、
また嫌な気持ちさせてしまったかな‥‥。

