『1週間待て』

そう言われて、今日で1週間。
人に血を与えなくなってから、時の流れはとても早く感じた。
紅さんは、本当に人の血は飲まないようだった。
飲むのはもちろん、

‥‥動物の血。



私は紅さんにこの1週間の間、何が出来たかな?
お世話係りとして紅さんに就けられたものの、いつも何かと助けられていた。
紅さんは、自室で食事を取っている。
旦那さんの事は、あまり好きではないみたい。
食器を片付けようと伸ばした手は、いつも止められた。

お前は休んでいろ。

そう言って。
掃除をしようとした時も、物を運ぶ時も。
いつも、俺がやる。と言ってさせてくれなかった。

それは何の為?



私が“餌”だから、早く体を回復させる為?
それとも、本当に本心からの気遣い?



「‥‥あの」

高校も同じ所と分かってから、一緒に登下校している。
“餌”だって、学校には通わせて貰えているのだ。
その帰り道、後ろから紅さんに声をぶつけた。

「なんだ?‥気分悪ぃのか?」

数歩後ろにいる私の正面に来た紅さんは、心配そうに私の顔色を伺った。

「い、いいえ、気分は全然大丈夫です」
「‥はぁ、お前なぁ‥」
「え?あっ、ゴメンなさい!!」

あぁ、何回目だろう。
敬語は止めてくれ。って言われてるのに‥‥。

「で、どうしたんだ?」
「あ、えっと‥‥」

もしあんな事を訊いたら、貴方はどんな顔をする‥?

「やっぱり、何でもない‥」

どっちでもいいか。
どっちにしろ気を使って貰っている事には変わりない。
心がどうとか、そんな事考えちゃいけない。

あと1週間したら、あんまり顔合わす事なんてなくなるだろうし。

「そういえば、あれから1週間経ったよな」
「え?」
「帰って直ぐ、親父の所に行くぞ」
「う、うん」

どうしたんだろう、急に。
急ぎ足で紅さんに付いて行く。
これは当たり前の事になっていた。