メガネなアイツ

「奈々、ごめん。今日は一緒に帰れないんだ。」

「彼氏でも出来た?」

「そんなんじゃないけど・・・・ごめんっ」

奈々に、言えなかった・・・・。

侑と帰るってこと。

悪い事してるわけじゃないのに。
侑と時間をじゃまされたくなかった。

奈々と別れると、私は走った。

遠くに侑の姿が見える。


四角くてシャープな銀色のメガネ。

スラッと高い背。

低い声。

はずかしがりやなトコロ。


転校してきたきたときと、まったく変わってない。

私のタイプでは無いけれど、侑といる時間は、どんな時よりも楽しかった。


侑と一緒に公園のベンチに、座った。


「侑ってホントにおもしろいよねっ。転校してきた時は、ガリ勉って思ってたけど、そんなに硬いこじゃないし、それに、勉強できないしっ・・・笑」

「これでも勉強頑張ってるつもりなんだけど・・・。俺が勉強頑張るようになった理由聞いてくれる?」

「う・・・うん」

侑が真剣な顔になってるところを見て、わたしは、つばをゴクっとのんだ。


「俺の兄ちゃん、病気で入院してたんだ。だけど、ある日死んじゃったんだ。死因は、医療ミスが原因らしくて・・・」


「・・・・・。」
綺麗なしずくが、制服に小さなシミを作る。





私は急に、侑の顔を、みられなくなった。

私は男泣きしている侑をみて、胸が熱くなった。
心臓をくすぐられたような、こそばゆさとともに、裕の隣にいるということに、ドキドキした。

”恋??”





「おれ、兄ちゃんに優しくしてもらったのに、そのお返しできなかった。」

「だから・・・・。」






「ごめん、はずかしいところ見せて・・・・。」



何も言えずに黙っている私をベンチにおいて、侑は立ち上がった。


「先、帰るわ・・・。」


侑は、公園を出て行った。

ドキドキが止まらない。