ガヤガヤした空気の中で、彼は現れた。

「ねえ、あれって、マジメ君じゃない・・・?」

「だよねぇ・・・・。」


「転校生の・・・・高橋です・・。」

きこえねぇよ、

と私は心の中でつっこんだ。
がっかり。転校生って言ってたから、ちょっとは、期待してたのになあ・・。

私は、高橋美紀。

不運なことに、転校生と同じ苗字。

高校2年生。

彼氏いない歴 17年。

いまどき、彼氏が17年もいない人なんて、いないよお。いままで何回か、こくられたことは、あるんだけど・・・・。

「高橋は、高橋の隣に座れ。高橋、たのむぞ。」

「おい、夫婦かよっ!!」

男子が、からかってくる。もう、うるさいなあ。私のタイプじゃないことぐらい、みんな知ってるのに・・・・。



「はぁ、残念。期待はずれだったね。彼氏は、校外で探すかっ」

「ってか、美紀は理想が高すぎるんだよ。」

「奈々は、いい人と付き合いたくないの?  だって、スポーツができて、勉強が出来て、優しくて、誠実で・・・。」

「はい、はい。お見合いじゃないんだからさ。」

「分かってるけど・・。」

はぁ・・・こんな私じゃ一生彼氏なんか、出来ないよ。


私の親友の奈々は、何でも相談できる最高にいい人。
ランチを食べる時だって、帰る時だって一緒。

今日も一緒に帰った。

「今年は、絶対恋するぞっ。もし私に彼が出来たら、一緒に帰れなくなっちゃうね。美紀、ごめんねっ」

「それ、高1の春から、毎日のように聞いてるんだけど・・・。」

「まあ、そんなこと気にしないよっ。」



こんなことを言っていた私を振り返ると、まだまだ未熟だったなって思う。

このころは、男は顔だって思ってた。

侑の優しさに、きづくまでは・・・・・。