紫馬「はぁい、皆さんこんにちは〜☆」


 紫のラメ入りスーツという、近づきがたい服装の紫馬は、甘いマスクで柔らかく微笑んでいる。


 その隣で、疲れた顔でつったっている、これまた長身、美形の男が呆れたように唇を開いた。



清水「何の冗談ですか?」



 いつも穏和な清水の表情が怒りにひくついているのが、観客席からも分かった。


 しかし、観客は演出と信じているのだろう。



 清水の怒りになど気付かず、むしろ、ダンディーな男二人の登場をうっとりした瞳で見つめていた。


紫馬「嫌だなあ。ヒデさん、M-1知らないの?」


紫馬はのんびりした口調で語りかけ、清水の眉間の皺を余計に深くさせた。


清水「存じませんが、それが何か?」


紫馬「本気で言ってるの?あのさあ、今の世の中、お笑いに精通してない奴はヤクザとしてやっていけないよお」


清水「や、ヤクザって。観衆の前で何を言いだすんですか」


紫馬「あれ?ヤクザって放送禁止用語なの?じゃあ、暴力団でも、極道でも何でもいいけど」


 飄々とした紫馬の語りに清水はガックリと肩を落とした。