「夏葵はもう帰るの?」
わたしをからかって遊んでる夏葵に、ごくごく普通に声をかけてる蓮も相変わらず……。
蓮曰わく、わたしと夏葵のじゃれあいは楽しそうに見えるらしい……。
出来れば助けて欲しいんだけどな……。
「……帰りたいのは山々なんだけど」
そう言って夏葵が視線を向けた先には、
大学の門の手前でゴチャゴチャとやり合ってたわたしたちに、柔らかい笑顔で手を振る人影。
風に漂った花の香りがふわっと薫る。
「あっ」
蓮の妹さん、蘭(らん)さんだ。
しかも双子の……。
「……買い物に付き合えって。荷物持ち」
「悪いね、夏葵」
妹がお世話になります。
こう続けた蓮に、
「……お互い様」
小さく笑った夏葵が、チラッとわたしを見た気がした。
珍しく瞳が柔らかい……?
背中を向け、手を二~三度振って去っていく夏葵をぼんやり見つめるわたしを、
「んっ?」
蓮が優しい顔で見つめて、
「行こっ」
わたしの手をそっと握り締めた。