蓮の手が離れたのと入れ替わりに、そこに触れてみれば、



「あっ……」



左耳の上辺りの柔らかくカサッとした感触にぶつかった。



ガラスに映ったそこには、赤紫色の花が三つ。
お星様を丸くしたようなその花が、耳元でわたしを彩っていた。



「ペチュニアを模した髪飾り。……夢梨に渡したくて」



綺麗に微笑んだ蓮はもう一度、ペチュニアの造花に触れ、わたしを柔らかく見つめた。



指先が、また頬を掠めたのは偶然なんだろうか……。



「夢梨と居ると『心が和らぐ』から」



「っ……」



蓮が心を許してくれるのが嬉しいのに……。
なんでこんなに今、わたしは胸が張り裂けそうなんだろう。




微睡みがかった瞳でわたしを見、


『百合奈』



そう呼んだ蓮の声が蘇って、耳から離れない。




「夢梨?」



ぼうっと蓮を見つめ続けていた瞳が、呼ばれた声で我に返る。



心配そうにわたしを窺う蓮に、にっと笑いかけ、



「ありがとうっ。蓮」



精一杯明るい声を出した。




笑い返した蓮の瞳にわたしが映ってる。


ねぇ。



そこに映ってるわたしは、ホントに夢梨ですか……?