真っ直ぐに整ったネクタイに納得した後、わたしのオデコを指先で弾き、夏葵が薄く笑った。



いつもこうやって、背中を押してくれるんだよね……。


「ねぇ、夏葵」


「んっ?」



「いつかさ、夏葵に会わせたいなぁ。蓮」



「……蓮?」



「苑田 蓮っていうんだ。花屋の店員さん」



「…………」



初めて告げた名前だったせいか、蓮の名前を聞いた夏葵は一瞬驚いたような顔をして、



「……そのセリフ、ちっとは進展させてから言えって」



「だから頑張るんだってば!」




すぐにいつもの皮肉屋な顔付きに戻って、小さく吐き捨てる。



ムキになって言い返したわたしに気がつけば背中を向け、



「へいへいっ。キラースマイルとやらで頑張ってこいっ」




ヒラヒラと二~三度手を振り、大学の人波の中へと消えていった。




ストレートに、頑張ってこい……なんて珍しい。




「応援してくれたことには変わりないもんねっ」



自分で自分に言い聞かせ、わたしはショッピングモールへと駆け足で向かっていった。