「ごめんごめん……夢梨が可愛いからつい」



「っ!!」



何の躊躇いもなく撫でられた手のひらの感触と、満面の笑顔が頭の中を占めていく。




恥ずかしさで目が潤んでるのが、反射したガラスに映って見えた。




「ちょっと待ってて」



恥ずかしさが全身を駆け巡るわたしを置いて、店の奥に消えた蓮。



このまま去ってしまおうかなんて考えがよぎった瞬間、



「夢梨っ」



振り返ったわたしの目の前に、薄桃色の真ん中に鮮やかな黄色が映える可愛い花。



赤のギンガムチェックのリボンが巻かれた手のひら大のカゴに入ったそれを、



「苺の花。……白だけじゃなくて、こんな色も見せるんだよ」



「…………」



「この間のとは違う苺の花言葉」



わたしの手にそっと握り、乗せてくれた。



「『夢梨は俺を喜ばせてくれる』」




向けられた微笑みに、恥ずかしさで潤んでいた瞳から涙が溢れた。




「……あり、がとう」


「俺のセリフ」



苺の花で塞がったわたしの手の代わりに、蓮の細い指が頬を伝う涙をいつまでも払ってくれていた。