気がつけばわたしの足は、花屋の前に立ち尽くしていた。




しゃがみこんだ彼は、花たちの表情を窺うかのように視線を移していく。




「…………」



足が勝手に吸い寄せられて、わたしに気付いた彼は不思議そうにこちらを見上げ、



「……何かお探しですか?」



柔らかく微笑んだ。



目が合うなり胸の高鳴りは、呼吸を乱すように速まり始めた。



「あ、の……」



ゆっくりと立ち上がった彼を目で追い、見上げる。



高い身長に対して細身の体。
加えて、肌の白い彼はどこか神秘的で儚げにすら見える。



通学用のカバンをギュッと握り締め、わたしは意を決して口を開いた。



「……教えて下さいっ」


「はい?」


「名前を……」


「どの花ですか?」



ガチガチに緊張して震えた唇からは、上擦った変な声しか出て来ない。



柔らかい笑みを湛えたままの彼が、じっとわたしを見つめていた。