「もてる? 私が?」

ありえない言葉を耳にして、相手の顔を凝視した。

奨学金のおかげで生活は楽になったし、成績も少しは持ち直したけど、もてる要素なんてどこにもない。
その証拠に、高校二年にもなって、男の子に告白された経験は皆無だ。

「嘘だと思うのなら証明しようか? モモと付き合いたいって男の子を紹介するよ?」
「と、とんでもない!」

携帯電話を出そうとする気配を察し、両手でバッテンを作って飛びすさったモモは、「ああ、また、逃げられた」という友の声を背中で聞きながら、急いで図書館に駆け込んだ。

落ち着ける席を確保しようと、奥の隅に向って歩いていくと、書棚に背を預けるようにして正隆が本を読んでいた。