「山田はいる?」

正隆の声を聞きながら、モモはこっそりと教室から逃げ出した。
まともに顔をあわせれば、挨拶ぐらいはするようになったけど、根本的には何も変わらない。
モモは相変わらず正隆から逃げ回っていた。

「ねえ、どうしてよ!?」

仲の良い友人に責めるように告げられて、モモは困ったように目を伏せた。

二年になってぐんと背が伸びた正隆は、日本海軍の士官服がモデルだという濃紺の制服が、怖いほどよく似合っている。

あの隣にいても良いのは、美人で頭の良い、お金持ちのお嬢様だけだ。