雨が新聞をおおうビニールをパタパタと叩く音にはっとした。
配らなければならない新聞は、まだたくさん残っている。

自転車の向きを変えようとした時、正隆がびしょ濡れだということに気が付いた。

手にした傘をモモに差しかけて、自分は雨の中に立っている。
十一月の雨は冷たい。
このままでは風邪をひかせてしまう。
いつものように急いで背を向けた時、重たい自転車がぐらりと揺れた。

「やまだ! おい、やまだ!」

別人のように落ち着きを失った正隆の声。

どうしたんだろう?
自転車も身体もものすごく重い。

何が起こったのかわからぬまま、自転車に引きずられるようにして、モモはずるずるとその場に倒れ込んだ。