珍しく配達先が増えたということで、新聞を満載した自転車をヨロヨロとこぎながら、地図上にバッテンが記されたその場所まで言ってみると、あきれるほど大きな屋敷がそびえていた。

門の前に一人の少年が仁王立ちしている。
まだ、朝の四時半だというのに、カジュアルななかにもピシっときまった服を着て、これから外出でもするのだろうか。

「おはようございます!」

笑顔で新聞を差し出したモモは、相手の顔を見るなり、「あ」と小さな叫び声をあげた。

バサリと落ちた朝刊を、少年は無言で拾い上げる。
何かを確認するように新聞を見つめていた瞳が、ゆっくりと少女の方に向けられた。