毎月、母が切ってくれる髪は、長めのおかっぱにシャギーを入れただけだし、バイトに忙殺されて疲れた顔をしているし、勉強時間もあまり取れないから、成績も後ろから数えた方がはるかに早い。

がっくりと肩を落としたモモは、重い足を引きずるようにして歩き出したが、校門の前に佇む長身の影を見るなり身を翻した。

「逃げるな!」

するどい命令口調にびくりと身体が震えたが、そのまま脱兎のように逃げ出した。

(オレ様口調の王子様なんて最悪!)

その日から、モモはますます正隆を避けるようになった。