「正確な値段を教えてもらえれば、少しずつでも必ず返すから」
「なるほど。お前は俺に借りがあるということだ」

端正な顔に不思議な表情が浮かんだのを、モモは不気味なものでも見るように見上げていたが、続く言葉を耳にして、反射的に相手を突き飛ばしていた。

「じゃあ、俺の彼女になれば? それなら、弁償は帳消しに……」
「いや、絶対にいや!」

茫然と佇む相手に思い切り拒絶の言葉を投げつけて、モモはくるりと踵を返した。

これは貧乏人をいたぶるための新手のいじめに違いない。
伊集院正隆はこの学校の王子様だと、たった今、聞かされたばかりではないか。