「あっ!迎えが来たわ!」

少女は少し寂しそうに立ち上がった。

公園の入口を見たが、誰も見えなかった。
「迎えって?」

少女の方を振り返ると、赤いコートの少女は、見る見るうちに大きくなっていった。

「私はあなたに作ってもらったゆきうさぎだったの。でも、あなたが毎年私の事を思い出してくれたから雪の精になることが出来ました。」

「雪の精になってしまうとこうして、会いにくることが出来なくなってしまうから……。」
赤いコートの少女がゆっくりと近づいて来る。
金縛りにあったように体が動けない!
「さぁ、迎えに来たのよ。私と一緒にいきましょう。」
耳元でゾクッとする声で囁いた。
「よくあるお話しなら、ここで、あなたを力ずくで連れて行くところだけどね…。」
小さくため息をついた。「お別れを言いにきただけ。」
「お別れ。」


ヒュンと冷たい風が二人の間を吹き抜けていく。
「ええ、分かったわ。もう行かなくちゃ。」


赤いコートの少女は、俺の頬にそっと触れた。
『小さなゆきうさぎのままでも幸せだった。雪が降ったら思い出してね。あなたが作ったゆきうさぎのことを。』
「ゆきちゃんなのか!」
その一言を絞り出した時にはもう、姿が消えたあとだった。