一歩外に出るとむせ返る程の異臭が立ち込めていた。

ただ、前を見据えて走る。

救いなのは異形の動きはそれ程早くないこと、そして楼蘭荘が遠くはないことだった。

迅に手を伸ばそうとした異形の腕を叩き切る。
痛みを理解しているのか、甲高い悲鳴と黒い粘液が飛び散る。


体の弱い凪を狙っているのか、迅に群がる異形は後を経たない。

あたし達の走った後は異形の残骸が転がっていた。

「早く!」

楼蘭荘が見えた。
幸いなことに異形はまだ少ない。

迅の手を引き、佑が開けていてくれた扉になだれ込む。



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