「情けな」

「うるさいっ!」

アクセル全開で目的地到着。
佑の悲鳴はあれから止まなかった。からかいがいのある奴だ。


バイクから降りて眼前の建物を見上げる。
一瞬視界に入った佑の足が生まれたての子馬のようにぷるぷるしてたのは見なかったことにしよう。

楼蘭荘と書かれた建物はこの村に少し似つかわしくないように思えた。

「でかくないか?」

「でかいね」

村人の数が10人のこの村に高級ホテル並にでかい建物。
最初に口を開いた佑も二の口が告げないみたいだった。

「昔は結構栄えてたみたいですよ?」

突然現れた声に驚き振り返る。
着物に白いエプロン、そして片手には足元を照らす灯。

「えっと…ここの方…」

「えぇ、女中の七瀬と申します。
…奏様に佑様ですね、中へお入り下さい」

あたしが馬鹿みたいに握り締めていた招待状の名前を確認して中へと招き入れる。

重そうに見えた玄関ドアも意外に軽いようで七瀬の細腕で簡単に開いた。

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