アクセル全開のまま一時間程走り続けた。
空は茜色から藍色、そして漆黒へと変わり始めてる。

先程の住宅街から遠く離れた田舎村で見慣れた人影を見付けてブレーキをかけた。

「佑?何してるの?」

佑と呼ばれた青年はおもむろにあたしのバイクの後ろに座った。

「足…」

「は?」

「歩きすぎて痛い」

「…………」

何かあったのかと心配したあたしが馬鹿でしたね。
もう一度思い切りアクセルを踏むと後ろから悲鳴が上がった。

「奏!もうちょっと!ゆっくり!」

なんとなく無視を決め込んでみる。
いゃあぁぁと間の抜けた男の悲鳴が廃村間近の集落に児玉した。











水に恵まれた村。
村の端を流れる川も自然も美しいまま。
そんなこの村には現在10人が生活してるという。

地図からはもう消えてしまっているこの村は確かに存在している。


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