――どうやら君は、あまり運と言うものがついていないらしいな。 と、友達に言われた。 確かあれは、眠い3限目の授業中だ。 友達にそう言われても、僕はただ首をひねるだけだった。 だって、僕は充分恵まれているではないか。 家はまあ一般の家庭だし、親の夫婦仲も悪くはない。 3つ上の兄は去年新卒で中流企業に入社した。 僕も大学でやりたい勉強をやらしてもらっている。 友達もそれなりにいる。バイトも最近賃金が上がった。 普通の暮らし向きだが、この「普通」こそが素晴らしい人生ではないか。