女尊男卑

羽音は親に話すことで中絶費用を出してもらった。

自分のお腹の中に小さな命がある。

その命を自分の手で奪ってしまったことは一生かかっても消えない傷になった。

そして父親に殴られてできた傷跡がいまだ消えずに右腕に残っている。

小学校の高学年になれば会話の内容もなんとなくわかる。毎日喧嘩の続く家にいた琴葉は姉のお腹の中に赤ちゃんがいるってことは十分理解できた。

成長するにつれ、真実がわかった琴葉は辛い気持でいたたまらなかった。

私に羽音の中絶の話をしたのも琴葉だった。

悪気があるとかじゃない分、余計私の胸にも熱いものがこみあげてきた。

それ以来、私の中で羽音のイメージが変わっていったんだ。

同情じゃないよ。

辛い経験をしたからこそ強い女になったんだって。尊敬だよね。