one contract



入学式が終わって。
学級扱いも終わって。
帰って公園でまた踊ろう。



‥‥と、思ってたんだけど‥‥。



「迷ったぁ―――‥ッ!?」

この学校広すぎッ!!
何処が何処だか分かんないよッ!!
地図とか何処かに無いわけ!?
てか、本っ当に広すぎぃッ!!
なんせこの学校は1学年600人、20クラスの超マンモス校。
しかも隣には大学まであるし。
だから校舎も、敷地もかなりの広さ。

‥‥じゃなくて、

「どぉしよ‥‥」

このまま出られなくて、ここに一晩泊まり!?
‥なんてことは無いと思うけど‥‥。
早くこんな堅っ苦しい制服脱いで、思いっきり踊りたいんだけどなぁ。
そう思いながら、右も左も分からない状況で足を進めるボクの目に留まったのは―――‥‥。

「“生徒会室”‥?」

と書かれたプレートが下がった大きな扉に、ボクは少しだけ圧倒された。
うわぁ‥と眺めていると、その扉がキィッと泣き声を上げて中から人が出て来た。

「あ、君は昨日の‥‥、ダンスしていた‥‥」
「ど、どーも」

出てきたのは、生徒会長さん。
手にはプリントを沢山持っていて、覗けば“入学式の反省”などと書かれていた。

「どうしたのかな?今、ここには僕以外に誰もいないよ?」
「あ、いや‥‥、そんなんじゃな‥いです」
「? 生徒会の誰かに用事じゃないの?」
「う‥はい、迷っちゃって‥‥」

と言えば、生徒会長さんはプッと吐き出した。

ヒドッ!

「迷いたくて迷ったわけじゃないんですッ!!」
「ゴメンゴメン、良くある事だよ。広いからね。僕も入学したての頃は迷ったし」

って言いながら、まだ笑ってるし。
ていうか、敬語使うの大変だなぁ‥。
ボク、敬語ニガテ。