one contract


情けなく、間の抜けた声。
それと‥‥

「お、おい、桃!大丈夫か!?」

それを心配しているのか、怒っているのか区別がつかない程不器用な声‥‥。

「ご、ごご、御免なさいぃっ!!‥‥って、すみ、れ‥‥?」

ははっ、なんか変だ。
この2人の声聞いて、何故か安心して‥‥

「す、すす、菫!?どうしよっ、怪我しちゃったの!?」
「‥‥ふ、うぅ、‥っう」



泣くなんて。



慌ててボクに駆け寄る桃は、本当に心から心配そうな顔をしていた。
でも、違う。
この涙はぶつかった体が痛いから、安心したから出てる物じゃない。



これはきっと‥‥



「‥‥け、怪我、してない‥から‥」
「え?なら良いけど‥‥大丈夫?」
「‥‥っ、う、ん。ゴ‥メン、ね」

一言謝って、ボクはヨロヨロと力なく立ち上がった。そして足を進めようとしたけれど、それは適わなかった。

「は、なし‥て」

腕を掴んでいる紅をそう言って睨んでも、全く意味も無かった。
ただ、視界は緩んでいくばかり。
想像以上に涙はどんどん目から溢れて来て、止まってはくれなくて。
上手く息が出来なくて、何度も途切れては、繋がる。
そんなボクを見ている紅は、何か言いたげな顔をしていた。

「‥‥紅?」
「‥‥」

桃に名前を呼ばれて我に返った様に紅は、あっけなくボクの腕を放した。
そして、小さく舌打ち。
自由になった腕は行く宛ても無く、重力に引かれるがままぶらりと下がる。
そんなボクを見て、桃は遠慮気味に話しかけてきた。

「ねぇ、何かあったの?相談乗るよ?」
「お、おいっ!」
「紅、いいでしょ?ね?」
「‥‥」

桃にぎゅっと力強くも、優しく握られた手。
その手の優しさに、暖かさに、更に涙がポロポロと出てきた。

「っ、う‥‥あ、のね‥」

ボクは泣きじゃくりながら、一生懸命話した。





全部。





アオちゃんが吸血鬼だって事。
ボクがアオちゃんの“餌”になっている事を‥―――――
言っちゃダメだって事は十分に分かっているよ。
でも、この2人は大丈夫だってボクは信じてる。

だから‥―――――