「‥‥え、さ?‥ッ!!」

餌って、餌でしょう?食べ物って事‥ッ!?
な、ななな、何でそんなのになんないといけないワケ!?
でも、‥‥そこまでイヤってわけじゃないけど
‥今のみたいにきっと痛いよね‥‥。
なら、イ~ヤ~~~~~!!!!!

ゼェッタイにイヤ‥ッ!!

その時、アオちゃんの舌がボクの首筋に弧を描いた。
それがなんだか気持ちよくて、くすぐったくて。
今までの張り詰めた緊張が、これでほぐれたみたい。

ボクはいつの間にか声を出して笑っていた。

「ん、ふふ、あははは、く、くすぐったぁ、いってば!!」

さっきの恐怖はいつの間にか、嘘の様に消えていた。
ボクのこの笑い声に安心した様子のアオちゃんは、ゆっくりと微笑んで言った。

「‥‥ゴメンね‥急に。‥怖い事して。」

まだ何か仕掛けてくるんじゃないか。
そう思っていたボクの考えを裏切って、アオちゃんはボクに謝ってきた。
という事は‥もう、さっきみたいな事はしないって事?
ボクは、アオちゃんに掛ける言葉が見つからなかった。
だからとりあえず、今疑問に思っている事をぶつけてみた。

「‥‥あ、アオちゃんって、何者‥ですか‥?」

急に噛み付くし、血を‥飲んでた?
ボクは全くワケ分かんない状態‥‥。

「あ、アオちゃんって‥‥僕の事?」

アオちゃんは疑問の表情を浮かべて言った。

「そうだよ。“葵”だから“アオ”ちゃんっ!」
「‥そ、そう。」

全く納得出来ません。
というような硬い表情で返事をしてきたアオちゃんの口元に目が止まった。

あれ?そういえばアオちゃん‥‥

八重歯、スッゴイ尖ってない? 
さっきより大きくなってない?



―――まるで‥‥



「‥‥僕は、吸血鬼なんだ。」





吸血鬼の様に―――――‥‥