中曽根工業高校

(ミサキって…)

伊澄はヒノケンの言葉を思い出していた。

『ミサキちゃんがいればいいのに…』

『…まぁ、平たくいうと元カノ?』


『アイツ、昔からあんなんでさ。でも、初めて自分から好きになった子がいて…その子とつきあってるときは、浮気しなかったもん』


『凄くない?!俺らがいくら言っても直らなかった浮気癖がおさまったんだよ!!』


(なんか、風間くんが唯一本気で好きになった人…みたいなこと、言ってたな)

まさか、あの子がミサキちゃんだったとは…。

(でも、何で水澤くんが風間くんの元カノと?)

「ミサキって…あの、岬 彩香?」

ヒノケンの問いに、直人は頷いた。

「ミサキちゃん、ニューヨークじゃねーの?」

「あー、先週何か帰ってきたって」

「ふーん…元気だった?」

動揺するかと思われた聖也だが、普通に淡々と話している。




「なんか…妊娠したって」

「…は?」

直人のカミングアウトに、その場にいた全員が声を合わせた。

「…だから、出産のために日本に里帰りしたって」


「父親………は、ダレ?」

「ニューヨークの同じスクールの奴だって」

「……………」

「おい聖也」

聖也は無言になり、そのまま保健室から出ていった。